「上げる」ボトックス、「下げる」ボトックス
昨今「ボトックス」という言葉は、かなり世間に認知されるようになったと思います。
また、ボトックスの役割として「顔の筋肉を麻痺させてしわを取る」もしくはそこまで
極端ではないにしても「顔の筋肉を少し緩めてしわを目立たなくする」という事までは
ご存知の方も多いのではないでしょうか。
ところでこのボトックス、今でこそ「しわ取り美容」目的で広く使用されていますが
元々はといえば、整形外科領域などで「筋肉のこわばりを緩め」たり
「筋肉の痙攣を止め」たりする事に使われていた、または現在でも使われている
ことはご存知でしょうか。
つまり、「筋肉」に作用するボトックスは「しわを取る」だけではなく、筋肉が原因で起こる
あらゆる病態に対して効果を発揮することができるのです。
その中で、とても面白いボトックスの使い方として
「上げたり」「下げたり」ボトックスというものがあります。
人間のお顔にはありとあらゆる筋肉が縦横無尽に張り巡らされています。
筋肉の大きさ・形状・動き方も様々です。何しろ、顔の筋肉は必ずしも紙のようにペラっと
薄いものばかりではなく立体的なものもあり、動きも三次元的です。
このように多種多様なお顔の筋肉の中には、どこかしらのパーツを
「上げる」作用の筋肉もあれば「下げる」作用の筋肉もあります。
また、上げ・下げ、についても「真上・真下」に上げ下げする筋肉もあれば
「斜め上・斜め下」に上げ・下げする筋肉もあり
それらの複合的な作用により、皆様のお顔のあらゆるパーツは
適切な位置にポジショニングを取り、不自然ではない動きをする事により
魅力的な表情を形作っているのです。
一つの例を見てみましょう。
これは、口角を下げてみた写真です↓
次に、口角を下げている筋肉にボトックスを注射してみます↓
これでも、頑張って口角を下げようと力を入れているのですが
ボトックスの作用で筋肉に力が入りにくくなっているので
上の写真に比べると、出ているシワも少なくなっていると思います。
では、このように口角を下げる作用を持つ筋肉にボトックスを注射すると
力を入れていない時の口元の表情はどのように変化するのでしょうか。
ボトックス注射前↓
ボトックス注射後↓
わずかな変化ではありますが、口角を上げる・下げるバランスを取っている
複数の筋肉のうち、「下げる」筋肉の一つが弱くなったことで、
相対的に口角が上がります。
このボトックスの作用は逆も然りで、上下のバランスのうち、「上げる」筋肉に
ボトックスを注射することによって敢えて「下げる」事もできるのです。
例えば、昭和に流行った「弓眉」も、現代流行りの「平行眉」に近づけたいと思えば、
眉山を「上げて」いる筋肉にボトックスを注射すれば、相対的に眉山は下がり、
平行眉に近づける事が可能です。
但し、この治療の難しいところは、こういった「上げ」「下げ」をしている筋肉は、
必ずしも上下一対の単一の筋肉ではなく、複数の筋肉の相互作用によってバランスを
取っている、という点です。また、各々の筋肉の間には隔壁がある訳ではなく
一部重なっている事もあるので、簡単にお隣の筋肉にボトックスの作用が
拡散してしまう、という事です。
ボトックス治療は、効果の実感がし易く比較的気軽にトライ出来る注射治療と言えますが
効かせたい筋肉にだけ確実に効かせて、不要に周囲の筋肉に拡散させない工夫が
必要であり、ある意味とても繊細な治療とも言えます。
皆様ご自身も、ここを「少しだけ」こうしたい、といった風に、ご要望は細かいものだと
思います。
今回ご紹介した「上げる」ボトックス、「下げる」ボトックス、
ご興味を持たれた方はお気軽にカウンセリングを受けてみてくださいね。
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総曲輪ビューティクリニック
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執筆:
総曲輪ビューティクリニック 院長
佐藤 典子
形成外科専門医