COLUMN コラム
しみ取り治療の誤解
美容医療が広く知られるようになって何年も経ちます。SNSの力もあってか美容医療でこんなことができる、そんな知識が増えた方も多いと思います。その中で、希望者の多い「しみ治療」に関して未だに誤解が多いな、と思う項目をまとめてみます。

①治療を受ける「時期」への誤解
例えば来月の大事なイベント(結婚式・同窓会など)に向けてしみを取りたいという場合。アグレッシブなしみ取りレーザー治療や、強力な美白剤を用いた治療などは、治療終了後に一定期間、炎症が起こったり、炎症が起こった後に色素沈着が生じたりすることがあります。期間は、体質・肌質・用いたレーザーやお薬の種類によっても異なりますが短くても1ヶ月、長くて半年間程度(場合によっては1年近くも)と個人差があります。また、色素沈着の程度も、言われないと判らないレベルから、治療前のしみよりも濃く感じるケースまで様々です。ですから、「何月何日までにはきれいにしておきたい」と考えた場合に、だいたい何ヶ月くらいさかのぼって治療を終えておかなければいけないかを考えた上で治療を開始しないといけません。例えば、今月しみ取りレーザーを受けたとして、大事なイベントのある来月にまだ目立つ色素沈着が残っている、という可能性もあります。時々「先月、しみ取りレーザーを他のクリニックで受けてきたのですが、しみが取れていないんです!」と駆け込んでくる患者様がいらっしゃいますが、単にそれは一時的な色素沈着の時期であり、数ヶ月後には自然に薄くなりますよ、というケースがあります。しみ治療を受ける際にはいつ頃が「完成形」なのかを事前に確認しておくと安心かもしれません。
②レーザーの「回数」への誤解
レーザーや光治療器、というと「万能」と思われそうですが、治療機器の種類によって、1回でしみを薄くすることを目的としたものもあれば、10回くらいかけて少しずつ薄くしていくことを目的としたものもあります。あえて1回ではなく10回に分ける機器が存在する理由としては、皮膚へのダメージを最小限に抑えるためであったり、しみ以外のお悩みにも効果を期待するためであったり様々ではありますが、ちゃんと理由があります。ですので、どちらが優れているとか劣っているとかいうものではなく、お悩みの内容や肌質などによって使い分けがなされます。ただそういった使い分けがなされていることの説明を治療開始前に受けていなかったり、受けていても忘れてしまっていたり、ということがあります。治療費の支払い方法のひとつとして、時々「○○回コース」というものがありますが、一概には言えませんがこれは、1回でしみを薄くするタイプの治療ではなく○○回かけて少しずつしみを薄くするタイプの治療である可能性があります。参考にしてみてください。
③レーザー後のアフターケアに関する誤解
しみ取りレーザーを行った後には、平均2〜3週間程度のアフターケアが必要な期間があります。アフターケアの内容は、しみの状態や使用した機器の種類、治療を受けられたクリニックによっても違いがありますが、たいていはレーザーを当てた部分に何らかの保護を必要とする場合が多いです。軟膏を塗ってガーゼで保護、軟膏を塗ってテープで保護、軟膏を塗らずに被覆剤で保護、軟膏を塗らずに医療用コンシーラで保護、などが一般的なところですが、どのような保護を行うかは、意外にも大事なポイントです。また、保護を何日間行うのか、何週間行うのか、保護剤を頻繁に交換するのか、なるべく交換せずに過ごすのか、これも状況によって様々ですが、なんでも良い、というわけではありません。どれくらいの期間、どのような保護の方法を行うのかによっても、しみ取りレーザーの結果は異なります。過去にレーザー治療を受けた経験のある方でも、今回のしみの状態、用いたレーザーの種類・出力・当て方によってもアフターケアの方法を変えた方が良いケースがあります。経験者だから、と決めつけず今回の治療でのベストなアフターケアについて確認しておきましょう。
④かさぶたに関する誤解
しみ取りレーザーを行った後に「かさぶた」ができることがあります。但しこれは使用するレーザーの種類にもり、かさぶたができやすい機種、かさぶたができにくい機種、があります。また、しみの種類によっても、かさぶたができるタイプのしみとできないタイプのしみとがあります。かさぶたができてツルンと取れると、なんとなくしみがよく取れたような感覚を持たれるかもしれませんが、必ずしもかさぶたができないとしみが薄くならないわけではありませんので心配は要りません。また、かさぶたができると喜んですぐにかさぶたを取ってしまう方がいらっしゃいます。かさぶたができですぐ取れた!これは必ずしも喜ばしいこととは限りません。かさぶたが取れた直後はしみの取れたきれいな皮膚がお目見えするので、嬉しくなります。但し、かさぶたができること自体は悪くなないのですが、かさぶたが早く取れ過ぎてしまうと、新しくできた皮膚に強く炎症が起こりそこにまた色素沈着を起こし、しみの再発につながってしまうケースがあります。かさぶたができた後は、なるべくこれが剥がれないように優しくケアしましょう。なかなかかさぶたが剥がれないと心配になるかもしれませんが、かさぶたは3週間くらい貼りついたままでも全く問題ありません。むしろ、1週間でかさぶたが取れてしまった、そちらの方が心配です。
⑤次の治療までの間隔に関する誤解
1回で完了するタイプの治療もあれば、何回か回数を要するタイプの治療もあることは前述の通りですが、では、次の治療まではどれくらいの間隔をあければよいのでしょうか。1回で完了するタイプの治療であっても、しみが完全に取れきれないケースもあります。その場合にどれくらいの期間をあけたらもう一度同じ治療・もしくは別の治療を受けることができるのでしょうか。これは、受けられた治療の内容によって、数週間から1年程度までかなりの幅があります。早く次の治療を受けた方が早く改善するのではないか?と気は焦るかもしれませんが、実は「お肌を休ませる期間」が必要なケースも多々あります。むしろ放っておくことが逆にしみの改善を促すのです。その期間も適当に決まっているのではなく、必ず根拠があって期間が決まっています。ある一連の治療がひと段落した後に次の治療を考えられる場合、いつ頃からそれは開始できるのか知っておくといいですね。
⑥美白剤に関する誤解
美白目的にご自宅で塗っていただくクリーム類を「美白剤」と言いますが、美白剤には色々な種類があります。また、同じ成分の美白剤であったとしても濃度が異なっていたり、他の成分が混ぜられていたりすることでも、塗った時の皮膚の反応や効果の出かたは異なります。ですから、どのような美白剤をどのように使っていくのか、塗る期間、塗る量、塗った時の皮膚の反応、期待できる効果などを事前に知っておくのが良いでしょう。時々「美白剤を塗ったら赤くなってしまったので使うのをやめました」逆に「塗っても赤くもならなかったので効果がないのかなと思って使うのをやめました」というお話をお聞きします。まずは、「赤くなる」前提の種類のお薬・濃度であったのか、そこから確認が必要です。また、塗る量・塗り方によっても赤みの出具合は異なりますので、正しい用法で塗布できていたのかも気になるところですね。美白剤というと、クリニックで購入した後、完全に自己管理で再診も特にない、というケースもありますし、インターネットで購入できたりオンライン診療で購入できたりするケースもあるでしょう。ですが現実的には、ある程度「美白効果」が見込めるレベルの美白剤であれば、完全に自己管理、ということはあり得ませんしインターネットで購入できるはずもありません。コスメ・お化粧品とは違うカテゴリーだと考えていただくのがよいと思います。
⑦色素沈着に関する誤解
しみ取りレーザー治療や強力な美白剤による治療を行った後に色素沈着が生じることがある、とお話しましたが、この期間に関しても誤解が多いです。まず、治療前のしみの性状、治療内容、使用した機器・薬剤、体質・肌質によっても色素沈着の起こりやすさやそのレベルに差はありますがそれと同時に、色素沈着が落ち着いて通常の肌状態に戻るまでの期間にはかなりの幅があります。治療を受けられたクリニックによって、そもそもこの「色素沈着」についてお話をされないこともあるでしょうし、仮にこのお話を聞かされたとしても、色素沈着が「1ヶ月」で落ち着くと言われる場合もあれば「半年」で落ち着く、と言われる場合もあったり、何が正しいのか混乱すると思います。このように医師によって言い分が異なるのは、実際に治療内容によって期間が異なるからでもありますし、専門家でも予測が実際難しいからでもあります。インターネットの情報や他人の経験談を鵜呑みにせず、担当医の見立てをよく聞くのがよいでしょう。
⑧自分の経験に基づく誤解
「しみ治療」が広く知られるようになったおかげで、「しみ治療経験者」の方も増えてきたと思います。その際に注意したいのが「同じ人でもしみの状態は各々違う」ということです。例えば、5年前に右頬のしみ取りレーザーでキレイに取れた経験がある。今度は左頬にしみができてきたので同じようにしみ取りレーザーをしてみよう、そう考えるのは当然です。ですが、仮に同じ人、一見同じように見えるしみであったとしても、微妙にしみの性状が異なることはよくあります。全く同じ治療がベストであるかどうかはわかりません。レーザー以外の方法の方が適している可能性もあります。また、同じようにレーザー治療をしたとしても、前回右頬のしみがキレイさっぱりと取れたように左頬のしみが薄くならないこともあります。しみにはこの治療、と限定せず、現在のしみに対するベストの方法を探っていきましょう。また、逆に以前にしみ治療をしたことがあるが、期待するほどに薄くならなかったので、諦めた方がいいのか、他の治療に切り替えた方がいいのか迷っている場合。諦めるのは早いです。過去のしみが薄くならなかったことには必ず理由があります。治療を受けたクリニックで理由を確認するのが一番手っ取り早くはありますが、そうもいかないという場合は、今回治療を受けようと思っているクリニックで、過去の経験談をできるだけ詳しくお話いただき、同じ治療でもよいのか、他の治療を考えるべきなのか相談しましょう。
⑨日焼け対策に関する誤解
まず、しみ治療をしようと思った段階で「日焼けをしない」という大前提があります。勿論、日焼け以外の理由でしみが発生することもありますが、日焼け、つまり紫外線の影響でしみが発生したり濃くなったりすることが多いのは周知の通りだと思います。ですが、日焼けをする→しみができる→しみを取る→安心して日焼けをする→しみができる、のループにはまっている方が意外といらっしゃいます。特に男性によくみられるのですが極端なことを言えば、日焼けをし易いライフスタイルが変わらないのであれば、しみ治療はしない方がいいです。しみができたらまたレーザーをすればいいのではないか?と思われるかもしれませんが、日焼けをしつつしみ取りレーザーを受けられると、最悪のケースとしてはレーザーを受ける前よりもしみが濃くなってしまうケースがあります。レーザーは万能ではなく、日焼けをするとむしろ牙を剥いてきます。現時点で、日焼けが避けられないなと思われるのであれば潔く、しみ治療は諦めましょう。むしろ、撤退する方が得策です。また、よく受ける質問の一つに「しみレーザーをした後、いつまで日焼けをしないように気をつけたらいいですか?」というものがあります。答えは「ずっと」です。それは難しい、という方であったとしても最低限3ヶ月から6ヶ月間くらいは気をつけていただいた方がいいです。それから「外出時は日焼け止めを塗っています」という方も多いですが、基本的には屋内で過ごされる場合も完全にカーテンを閉め切って過ごされるのでない限りは、窓から紫外線は降り注いできますので、朝起きたら日焼け止めクリームや日焼け止め効果のある下地、ファンデーション、白粉など何かしらを塗りましょう。必要なSPF値はライフスタイルによって異なります。SPF値にこだわるのも大切かもしれませんが、それよりもコンスタントに毎日日焼け予防ができるかどうかが重要です。クリニックへ来院される方も、是非日焼け止めを塗っていらしてください。
⑩しみ治療そのものに関する誤解
しみ治療=レーザー、を想像される方が多いと思いますが、実はレーザーが不向きなタイプのしみも存在します。まずは、レーザーが向いているタイプのしみなのか、向いていないタイプのしみなのか、診断してもらうところから始めましょう。また、仮にレーザーが向いていたとしても、レーザーの機種による向き不向きがあります。全ての種類のレーザーをどのクリニックも取り揃えているわけではありません。たまたま、あなたのしみに向いているレーザーをクリニックが持っていないこともあります。その場合に、受診したクリニックで無理に不向きのレーザーで治療をしないといけない、ということはありません。もし、ご自身のしみに合った他のタイプのレーザーを別のクリニックが所有しているのであればためらわず、紹介してもらうのも一つの手段だと思います。しみの診断、向いている治療の選択、これは必須でしょう。
今回は「しみ治療」に関して誤解を生みやすい⑩の項目についてお話しましたが、以外と多いな、と思いませんでしたか?これらを全て把握しておく必要はありません。要は「誤解をしやすいのだな」ということを知っておいていただき、疑問に感じた時にすぐ主治医に相談できる体制を取っておくことが大事なのです。かなり一般化した「しみ治療」かもしれませんが、やりっぱなし、受けっぱなし、ではまだまだその根絶は難しいというのが今の美容医療の現実です。
執筆:

総曲輪ビューティクリニック 院長
佐藤 典子
形成外科専門医